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残酷な地上のテーゼ 

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫 い)とある飛空士への追憶
(2008/02/20)
犬村 小六

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 『ローマの休日』と『天空の城ラピュタ』の切なさと爽やかさを意識しながら身分違いの恋と一人の少女を守るための空戦を描いたといわれる、恋と空戦の物語。
 「美姫を守って単機敵中翔破、1万2千キロ。やれるかね?」レヴァーム皇国の傭兵飛空士シャルルは、そのあまりに荒唐無稽な指令に我が耳を疑う。次期皇妃ファナは「光芒五里に及ぶ」美しさの少女。そのファナと自分のごとき流れ者が、ふたりきりで海上翔破の旅に出る。

『――助けられるなら、助けたい。
 ドブネズミのように生きてきて、ゴミクズのように空に散る運命なら、せめて一度くらい、胸を張って誇ることのできる仕事をやり遂げてみたい。幼い僕を救ってくれたファナをこの苦境から助け出したなら、自分のしたことを誇りに思えるのではないだろか。いつかどこかの空で炎を噴き上げ散華するとき、僕の辿ってきた道を後悔しないで済むのではないだろうか。』

 忙しい毎日のなかで、自分が最近いつ空を見上げたか、その瞬間を思い出せるだろうか? 自分に余裕が持てない状況にあるとき、人は、空を見上げる余裕をなくすといわれる。
 映画『天空の城ラピュタ』では、ある日、少女が空から降ってきた・・。パズーは、忙しく働くその中で、ふと夜空を見上げたその瞳孔に、彼女の存在をしっかりと認めることができた。空に思いを馳せる余裕をなくしてしまうと、そんな秀逸な出会いも危機に瀕してしまっていたかもしれない。

 余裕があるから空を眺めるのではなく、空を見上げるから、余裕が生まれるのだと最近思う。乾いていく余裕と、損なわれてしまった感受性は誰のせいにもできない。自分自身が護るより他に術はない。でも、ひとたび余裕と感受性が潤えば、些細な日常を思い出として留めておく余裕ができる。
 人生は五つのいいことが揃えばいいんだと、かの文豪ヘミングウェイは言っていた・・・
 いい女、いい友達、いい酒、いい本、そして、いい思い出。

優しい星霜に映しだされるもの 

いま、会いにゆきますいま、会いにゆきます
(2003/03)
市川 拓司

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 好きな人を思うとき、必ずその思いには別離の予感が寄り添っている。もし、そうだとしても。書かれているのは、ただ「愛している」ということ。限りない優しさに魂が洗われるような、哀しいけれど幸福な、最高の恋愛小説。

『「あなたは幸福? 私はあなたを幸福にしているの?」
きみは、いつでも、そうやって訊いていたよね。ぼくを幸せにしているんだろうか?って。そんなふうに思ってくれる奥さんがいることが幸せなんだって、きみは知らなかったのかな。』(本文より)

 相手のことを幸せにできているのか、自分の想いが相手にちゃんと伝わっているのかを確信するのは易くない。それは、相手がどんな風に感じて、どんな風に受け取っているのかということは、相手の価値観や感性に依存するしかないからなのかもしれない。けれど、幸せというものは、それに気づくことのできる感性を持っているなら、たとえそれが小さく、ささやかなものだとしても、二人の間には確実に存在している。

 つまるところ、相手のことを幸せにできているのかどうかはわからない。でも、幸せを気づかせてあげることなら確実にできるはず。「小さくても確実な幸せ」に一つひとつ気づいて積み重ねていくこと、それが結局幸せになるための最良の道なんじゃないのだろうか。

P.S.
ほとんどの人々は、条件付きの幸せを求める。だが幸せは条件を付けないときにしか感じられないものだ -アーサー・ルービンスタイン

24時間闘えますか? 

働きマン (1) (モーニングKC (999))働きマン (1) (モーニングKC (999))
(2004/11/22)
安野 モヨコ

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 主人公の松方弘子は28歳・独身。そして、週刊「JIDAI」編集部の女性編集者である。弘子は編集長や上司や同僚たちと一緒に右往左往しながらも良い雑誌を作る為に日夜奮闘する。寝食を忘れ、恋人との逢瀬もままならず、ジレンマに悩み、誰かとぶつかり…。
 それでもいい仕事をする為に、弘子は職場で、取材で、自宅で、「働きマン」になる。一生懸命に働く人に、男も女も関係ない。

『(彼と)会う時間が短いからグチを言わないようにした。
近況から説明するのが面倒でもうお互い何も話さなくなった。
・・・こんなにちぎれそうになってなんで私は働いているのかな...』

 辛いときに、辛いこと自体がキツイのではなく、辛いときに、辛いと言える相手がいないことがキツイのかもしれない。たとえ相手がいたとしても話を聴いてくれないならば、意味がない。なぜかというに、分からないのは仕方ないけど、分かろうとしないのは問題だから。

 こんなとき、『よくがんばっているよ。よくやっているよ。』の一言が、閉じた気持ちをリセットしてくれる。それに、こんなコトバをかける側の人も、元気をもらえるし、元気になれる。ポジティブなコトバは香水のようなもので、相手にふりかける時、自分にも数滴かかるから。

 そして、たくさんある感情のなかでも、唯一愛情だけは前払いである。きっと、愛情は試すものじゃなく、そういうときに試されるものなのだろう。

 何をゴールに、何を支えに走るのか? 何かに迷いを感じたなら、脇道にそれてちょこっと道草をするのも悪くない、と思う。

P.S.
芸術でも技術でも、いい仕事をするには、女のことが分かってないとダメなんじゃないかな。-本田宗一郎

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